「ランニングと脳」
高校生の頃,たまたま新聞の広告で見つけた.著者の久保田競氏は当時京大霊長類研究所教授.TVに出演した自分の顔を見て驚愕し,それからジョギングを始めたらしい.専門を生かして,走ることを医学的・科学的に解説している.いわゆる「ランナーズハイ」の精神状態を科学的に解明するのが著者の目標だと書かれていた.ランニングを科学の範疇にいれることは今では当たり前になっているが,当時としては(少なくても日本では)画期的なことだったと思う.
と同時に,走るというとやたらめったら速さを競うような風潮に批判的である著者の意見にも共感した.著者はマラソン大会で10キロを50分ほどで楽々完走した.しかし,この大会で必死に走りゴールに倒れこみ苦しがっている連中を見て呆れる.競技者ならともかく,一般の人は長距離を自分のペースで走ることに意義がある.精神的にも肉体的にもこれが一番良いのである.にもかかわらず,主催者が競争を煽るような大会のいかに多いことか.この点は本書の出版から20年余り経った今でも変わっていない.これこそが日本のスポーツ文化の底の浅さの現れであろう.
とはいえ,この本を読んで走ることに興味をもち,あげくに十分な練習もせずにホノルルマラソンに参加した私です.(こういうのを若気の至りというのだろう)おかげで右膝を痛め,今でも寒かったり疲れたりすると必ず右膝が痛くなる.そしてまた,30キロ付近で間違いなく足が動かなくなるという事実も体験した.だから,経験者は語るの言葉どおり走るのは遅いがその分口は達者である.
この本の続きもある.2002年5月号のランナーズという雑誌に「ジョギングで頭が良くなる」(pp.14-16)という記事があり,これに久保田氏の研究成果が報告されていた.ジョギングをすることで,人間の前頭葉にある「ワーキング・メモリー」という一時的な記憶を行う箇所の働きが活性化されることを実験的に証明したらしい.今まではマウスなど動物実験で示されていたらしいが,人間に対する結果ということで世界的にも重要な成果とのことである.
最近ではワーキング・メモリーは老化の指標として使われている.年をとると頭が同時に2つのことを処理できなくなる.これはワーキング・メモリーの働きが悪くなったためといわれている.ワーキング・メモリーの働きだけが頭の良し悪しと関係するわけではないから,ジョギングで頭が良くなるという言い方は本当は正しくない.しかし,ジョギングに脳の老化を防ぐ効果があるのは事実のようだ.
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コメント
コメントありがとうございます.
人間はメンタルな生き物といわれますが,実はメンタルを支えているのは肉体であると理解しています.というのも人体は開放系ですのでいかに代謝をうまくやるかが重要になるからです.
月間120キロはなかなかの距離かと思います.膝などを痛めないよう(老婆心ながら).
投稿: 庵主 | 2009年7月 6日 (月) 18:43
私は43歳の会社員です。3年程前からジョギングを始めました。月間120kぐらいです。
確かにひらめきと言いますか、仕事柄、施策提案といいものが浮かびます。自分で言うのもなんですが、体力は衰えますが、脳は成長していくというのは本当のような気がします。伸び率は3歳までがすごいみたいですね。
投稿: | 2009年7月 4日 (土) 11:25
なかなか面白い学会ですね.私の研究室にはマラソンをやっているM1の学生がいます.長距離は根気や集中力がついていいと思います.
私はここ数年,4月に市が主催するマラソン大会に毎年出てますが5キロです.根が無精なのでいつも年明けあたりから練習ですので5キロがいいとこです.しかし,10キロはキツイですね.ちゃんと練習しないとかえって身体を壊すかもしれません.くれぐれも無茶のないよう.
PS
メールありがとうございました.興味深い指摘でした.あらためて返信いたします.
投稿: 庵主 | 2006年11月24日 (金) 12:23
私の所属する学会には、講演会の前に日に10km走るという信じられない伝統がある。来春、それが我が職場で開かれる。準備を始めねば・・・・昨日から通勤を徒歩からジョギングに切り替えました。しかし寄る年波には・・・
投稿: yablinsky | 2006年11月22日 (水) 20:46